日本での幸せライフレシピ
SNSはライフライン
ベトナムでは公私ともにSNSの活用が盛んです。どのように活用しているのでしょうか、ここで見ていきたいと思います。
ベトナムのアプリ企業、Appotaの調査によると、2020年12月時点で全人口の73%が毎日SNSを利用しているということです。なかでもベトナムで人気のFacebookの利用時間はスマホ利用時間の25%、またYouTubeは12%を、それぞれ占めています。
ベトナムでよく使われているSNSは、Facebook、Youtube、そしてベトナム生まれのSNSであるZaloです。旅行や日常風景の写真などを共有、交流するだけでなく、ショッピングや情報検索、ビジネスまで、ありとあらゆる場面で使われているのが特徴です。数字や実情だけ羅列しても実感がわかないかもしれませんが、ベトナム人、とくに20~30代の人にとってSNSは一種のライフラインともいえるほど生活密着のツールとなっています。
ベトナム人が一番多く使うFacebookを見た時に驚かされるのが、その友だち数です。数百人、なかには千人を超える人もいます。この数字は、彼らがどれほど活発にFacebookを使っているのかを物語っています。もちろん本当の友だちだけではなく、仕事仲間や取引先、商品の売買、好きな店、趣味の仲間など、ありとあらゆるつながりが、Facebookに集約されています。
それだけにベトナムのビジネスにおいてFacebookは必須であり、地場・外資問わず企業や店舗などはPRのために自社ページを開設しています。
ある日系美容室がベトナム進出した際、カット後の自分の姿と同店の写真をFacebookで紹介すれば割引となるプロモーションを展開していました。日本とベトナムのビジネスマッチングイベントの集客に向けてFacebookページを開設し、広報を行った機関もあります。ベトナムにおいては、通常の広告よりもSNSのような1人1人にダイレクトに届く口コミ形式の方が、実際の集客という面で効果が高いのかもしれません。
このほか知り合いのベトナム人のなかには、Youtubeで花や果物を紹介して販売する、Zaloで仕事のプロジェクトのグループチャットを行う、Facebookを名刺やポートフォリオ代わりに営業するなど、さまざまな形でSNSを活用しています。
仕事の場でフル活用
以前、ある事務所を訪問した際、Facebookの仕事グループチャットを見ようとしたら表示できませんでした。聞くと、会社側のネットワークでFacebookを遮断しているとのこと。社員が勤務時間にFacebookに夢中になりすぎるため、仕事場では接続できないようにしたのです。
上記は最近あまり見なくなったケースですが、勤務時間のSNS利用に困る社長の話は、ベトナム、日本企業問わず何度か聞いたことがあります。「いけない」と分かっていてもメッセージ着信を知らせるアラームに反応してしまい、ついでに返事も返し、友だちの写真も見てみよう…となると、業務のことも忘れてしまうのかもしれません。
決して良いことではありませんが、その都度目くじらを立ててもいられないと思うのは、ベトナムの場合、公私でスマホやSNSを分けない傾向が高いことがあります。つまり、ベトナム人社員がスマホで懸命にやり取りしている相手は大事な顧客かもしれませんし、アップロードしている写真や動画は広報用かもしれません。たとえ私的な用途で使っていたとしても、これが情報源や人脈づくりにつながり、最終的に仕事に活用できる場合もあります。
かくいう自分も、ベトナムで取材する店や人を探す時は検索エンジンよりもSNSを使う方が格段に多数かつ多様な情報が出てくるので、非常に便利に使っています。頻繁にやり取りする顧客ならメールよりもSNSでつながった方が話も早く、「今メール送りましたよ」とメッセンジャーで知らせることもあるほどです。
ビジネスでフォーマルさよりもスピード感や情報量を重視するなら、SNSは活用しがいがあります。節度を守れない社員の場合は仕事の結果に表れ、言い逃れができないのは本人も分かっていることでしょう。ここは仕事で上手に活用してもらう余裕も大切だと思います。
※Appota調査
https://www.viet-jo.com/news/social/210515003057.html
あさき・ともみ 秋田県生まれ。2000年からライター、韓国語翻訳・通訳、日本語教師と、言葉に関連した仕事に携わっている。2012年からハノイ市に居住。ベトナム航空機内誌「ヘリテイジ・ジャパン」への執筆や編集など活動を続けている。