A Recipe for a Happy Life

日本での幸せライフレシピ

色の違い

見ているのは同じ色?

ベトナム人と共に働くなかで、文化や考え方の違いから来るすれ違いやトラブルが起こることがあります。ここでは実例をもとにしたストーリーを紹介してその原因を考え、日本人としてどう対応すべきか見ていきます。

<登場人物の紹介(仮名)>
ティエンさん:日本のIT企業のベトナム人ウェブデザイナー。
佐藤さん:日本のIT企業の社員でティエンさんの上司
※事実通り紹介すると会社が特定されてしまうため、事実をアレンジした内容となっています。

<会話>

佐藤:ティエンさん、ちょっといいですか?

ティエン:はい。

佐藤:××法律事務所さんのウェブサイトの色を変えるので、ティエンさんが担当してもらえますか?

ティエン:何色にしますか?

佐藤:今は青ですが、ぜんぶ緑色にします。今のウェブサイトは暗いから、もっと目立つ、明るい感じの緑色にしたいですね。

ティエン:はい、わかりました。

(1週間後)

ティエン:佐藤さん。お客さんのウェブサイト、色を変えました。

佐藤:ありがとう。確認します。……ティエンさん、この色は何ですか?!

ティエン:緑色ですよね? 佐藤さんが緑色にしてくださいと言いましたよ。

佐藤:緑色だけど、派手すぎて××法律事務所さんのイメージに合わないよ!

ティエン:でも、目立つように明るくするって言いましたよね?

佐藤:そうですが……。ウェブサイトの色、もう一度作りなおしましょう。

ティエン:?

<原因:異なる感覚>

佐藤さんはウェブサイトを明るい緑色に変えると言い、ティエンさんもその旨、きちんと把握しています。ここまではいいのですが、後でずれが生じ、結局はウェブサイト作り直しとなってしまいました。

すれ違いの原因は、色の感覚の違いにあります。じつは色の感覚の違いは、ベトナム人と一緒に働く現場でたまに経験することの1つなのです。

それはデザイン系の会社に限りません。不動産会社や工場などに勤務する日本人からも「赤い布を用意してと言ったら、原色のような真っ赤な布を持ってきた」「ぞうげ色のような黄色をイメージしていたら、レモン色の紙を用意していた」といったような話を時折、耳にします。

簡単に言えば、ベトナム人は日本人より明るい色の感覚を持っているようです。ベトナムで見るカラフルな果物や花のように、彼らは日本人から見ると非常に明るく鮮明な色の感覚を持っていると思います。

以前、あるベトナム人から「日本人はパステルカラーが好きですよね」と言われたことがあります。確かに、日本人は光を放つようなきらびやかな色よりも、やわらかくマットな色を好む人が多いように感じます。

ですので日本人の感覚で「赤」「緑」などと言っても、ベトナム人は彼らなりの赤や緑を思い浮かべている可能性があることを把握しておいた方が良いと思います。

<対応>

人の感覚は当然ながら、仕事とはいえすぐには変えられません。ベトナム人社員に何かのイメージを伝える場合は、どんな完成形にしたいのかを具体的に伝え、お互い歩み寄って感覚の誤差を縮めることが何より大切だと思います。

デザイン関連の部署がある企業であれば、色見本があると思います。求める色がはっきりしているなら、色見本を用いて色を決め打ちするのが一番確実です。

ただし多くの企業の場合、都合よく色見本があるわけではありませんし、指示する側が「こんな感じの色」という漠然としたイメージしか持っていない場合もあります。こうした際はインターネットや雑誌などで自分のイメージに近い色を指し示し、言葉でなく実物で伝えるのが良いと思います。

ここで紹介したトラブルは、色だけでなく大きさや形、デザインなどを伝える際にも起こりえることです。この場合にも自分のイメージに近い実物を示し、とにかく目に見える形で伝える方法が一番有効だと思います。


あさき・ともみ 秋田県生まれ。2000年からライター、韓国語翻訳・通訳、日本語教師と、言葉に関連した仕事に携わっている。2012年からハノイ市に居住。ベトナム航空機内誌「ヘリテイジ・ジャパン」への執筆や編集など活動を続けている。

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