A Recipe for a Happy Life

日本での幸せライフレシピ

Facebookだけではない

国が違えば、文化も異なる。ゆえに、ベトナム人のコミュニケーション能力は、日本人とは異質の文化の中で培われたことは間違いない。

例えば、推して知るべし、いわずもがな、問答無用といった日本的「しゃべらなくていいコミュニケーション」は、ベトナム人にはあまり通じない。5W1H(誰が、何を、いつ、どこで、なぜ、どのように)をきちんと伝えないと、誤解や行き違いが起こりうる。

ベトナム人は何より、個人から個人へ情報がきちんと届くコミュニケーションを尊ぶ。例えば、年下の人間が、年上の男性にあいさつするときは「Chào anh」(チャオ・アイン)などと言うし、感謝の念を示すときは「Cảm ơn anh」(カム・ウン・アイン)などと言う。自分にとって年上か年下の違いと、性別を含む示す人称代名詞を言い添え、誰に向かって自分の気持ちを伝えているのか明確に示すことが、ごく普通の会話である。

別に「誰」を会話の中で示さなくても、文法的に間違っているわけではないが、もし、市場のおばちゃんが肉や野菜を値切ってくれた後に「Cảm ơn」(ありがとう)と言うのと、「Cảm ơn chị ạ」(カム・ウン・チー・ア=おばちゃん、ありがとう)と丁寧に言うのとでは、今後の人間関係に響く可能性がある。下手をすれば「誰に向かって『ありがとう』って言ってるのさ!」と怒られても仕方ない。それほど、人間関係をつくる上で大事なポイントなのだ。

実は、いまや生活上の必須ツールとなったSNSを使ったコミュニケーションも、井戸端会議や居酒屋放談と基本は何ら変わらない。伝え方がデジタルか、アナログかの違いだけだ。

口コミで伝わる情報の速さと正確さは、先号「ベトナム人の口コミ」でも紹介した通りで、旧北ベトナムの仇敵だった米国の大統領が頭を下げにやってくることを、訪越の2年前に市民はとっくに知っていた。そんなベトナム人がSNSを手にした結果、個人、集団の情報共有に限らず、金融や貿易など電子商取引(EC)の世界で羽ばたくチャンスが飛躍的に大きくなった。

人口約9800万人のうち、約6000万人以上がFacebookを利用しているといわれるベトナムでいま、最も注目されているツールが「Zalo」(ザロ)と呼ばれるベトナム発祥のアプリだ。

簡単に言うと、ZaloはLINEとFacebookのいいとこ取りをしたようなアプリで、音声・ビデオ通話、グループチャット、タイムライン(投稿)、画像共有などを楽しめるほか、近くにいるユーザーの検索が可能だ。インターネットにアップされている情報をまとめると、ベトナム語、英語、ミャンマー語で操作が可能で、世界で1億人が利用していると言われ、うちベトナム国内のユーザーは5200万人とされる。スマホに限らず、Macやパソコンでも利用できる。

ただ、ZaloはFacebookと違い、1電話番号あたり1アカウントしか認められないそうなので、筆者はまだインストールしていない。いずれ、ベトナム国内で、ベトナムの友人・知人たちとのコミュニケーションに使おうと思うが、それまではFacebookで構わないと思っている。

ただ、1電話番号あたり1アカウントということは、Zaloの特性と効果を計算しやすいとも言える。つまり、ベトナム国民の50%強が使っていると断言できるツールであり、これをビジネスに応用できれば、市場シェア調査や各種アンケートに相当使える武器になり得るだろう。

ちなみに、ベトナム国内のSNSトップ3には、ZaloとFacebookのほか、Youtubeが入る。この三つのSNSをコンビネーションで使いこなせば、ビジネスにも、知的武装にも、コミュニケーションにも役立つに違いない。筆者の場合、コロナ禍で端末の前に座る時間が増えたので、この際、「アナログおじさん」を卒業し、デジタルデバイドされない生活を送りたい。と考えると、早めにZaloを使った方が無難かもしれない。


のじま・やすひろ 新潟県生まれ。元毎日新聞記者。経済部、政治部、夕刊編集部、社会部などに所属。ベトナム好きが高じて1997年から1年間、ハノイ国家大学に留学。2020年8月、一般社団法人日越協会を設立。現在、同協会代表理事・事務局長。

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