日本での幸せライフレシピ
古都フエ出身のプロのシェフ・ホアン トロン タンさん
日本に来たきっかけは何ですか？
私は長い間、ベトナムでプロの料理人として働いていました。実際、この仕事はそこそこ大変で、真の情熱があってこそ今日までこの道を歩んで来られました。
プレッシャーや困難により、私も諦めたいと思う時があります。しかし、2年ほど距離を置いてオフィスワーカーに戻ってみると、料理への情熱は何年経っても私の中で燃え続けていることに気づきました。
仕事上、日本に出張しなければならないこともありました。代々木公園や神奈川で開催される日越交流祭では、ベトナム料理を扱う店をたくさん見てきましたが、ほとんどが乾麺を使用していました。それ以来、扶桑の地に手作り生麺を使ったフォー店を夢見るようになりました。
そして2019年、正式に日本に渡り、実行に移りました。
現在、何のお仕事をなさっていますか？
現在、私は「Cô Ba Sài Gòn」のオーナー兼料理長を務めております。
2019年から、私と兄は店を開く準備を始めました。そのために、食材や道具などについて入念に学び、東京中のベトナム料理店やタイ料理店に足を運び、味を確かめたり市場を調査したりすることに多くの時間を費やしました。
当時は日本に来たばかりで色々大変でしたが、私の情熱に押され、結果的に順調に進みました。
2020年1月、東西線・日比谷線の茅場町駅にCô Ba Sài Gòn を正式に開店しました。都心の賑やかなオフィス街に立地しているので、客足は安定しています。自家製生麺を使った伝統のフォーについて好意的なご意見をたくさん頂いているので、とても嬉しく思います。
日本で学んだことのうち、最も良かったことや、強く印象に残ったことは何ですか？
初めて日本に来た時、私は日本の現代的な空気に強い印象を受けました。スマートな都市でありながらも伝統が息づいており、環境も良好で、都市の中にも緑があります。
店を立ち上げる際に、日本の友人達と一緒に仕事をする機会があり、彼らの勤勉さ、自己管理能力、規律性、きめ細かさに感心し、多くの事を学びました。
日本で夢を実現する過程で、どのような困難に遭遇しましたか？
最初の困難は言語の壁でしょう。それまでに日本語をある程度勉強しており、英語でのコミュニケーションも（自己評価ではそこそこ）できましたが、日常的に英語を使わない日本人が多いので、実際に話す際には戸惑いました。
特に、生麺をはじめ各料理の原料を探す際には本当に困りました。製麺機を日本に輸入する際には初めて日本の手続きや厳しい検査を知り、苦労しました。
第二の難関は、米です。 本場のフォー作りに適した米を見つけ、将来的には日本で自給したいと思っているので、手間暇が掛かります。6カ月絶え間なく探し続けた末に、ようやく本場ベトナムのフォーを遠く離れた日本で再現しました。
そしてコロナ禍です。開店して1カ月でパンデミックに見舞われ、ビジネスは厳しくなりました。しかし、お客様や友人のご支援のおかげで店を維持できており、幸運に思います。Cô Ba Sài Gònに寄り添っていただいた皆様に改めて感謝申し上げます。
今後の短期的/長期的な計画をお聞かせいただけますか？
現在、私はCô Ba Sài Gònを発展させ、より多くのお客様にサービスを提供させていただくと同時に、ベトナムと日本の両方のお客様にご満足いただけるように、より多くの料理の研究を続けてまいります。
また、フエ生まれの者として、故郷ならではの特別な料理 をメニューに盛り込むように努めています。これは望郷の念を解決するためのみではなく、ベトナム、そして万国の兄弟に私の故郷の食の美しさを味わっていただきたいと思います。
茅場町のCô Ba Sài Gònが落ち着いたら、東京、名古屋、大阪などにも進出して、より多くの方々にベトナムの味を楽しんでいただきたいと思います。
日本にいる皆様、特に同業の方々へのメッセージをいただけますか？
私の個人的な経験から、若い人たちは留学でも仕事でも、日本にいる間に学びの機会を最大限活用することをお勧めします。それは知識面でも、経済面でもかけがえのないもとになり、ベトナムに帰ってからの事業の足掛かりにもなるでしょう。
そして、何をするにしても全力を尽くしましょう。そうすれば、皆様が取り組んでいるあらゆる仕事から、何かしらの有益な学びが得られると思います。
また、健康は誰にとっても最大の資本ですので、勉強、仕事、休息の時間を無理の無いように調整してください。
最後に、日本で勉強や仕事に励まれている皆様のご健康をお祈り申し上げます。共に困難を乗り越えて、明るい明日を迎えられることを願います。
